立ち上がるときに腰が痛いのは、胸と脚の硬さが原因
立ち上がるときに腰が痛いのは、胸と脚の硬さが原因です。
腰には上半身と下半身をつなぐ役割があるので、胸や脚の動きが悪くなると、その影響を受けやすい立場にあります。したがって腰の痛みは、胸と脚の間で板挟みになっている腰からの「働いてくれない腰や胸の仕事を肩代わりするのは、もう無理です」という悲鳴です。
腰の骨が得意な動きは、前にかがんだり、後ろへのけぞったりする前後の動きです。一方で、後ろを振り向くような、ひねる動きは苦手です。わずか5度しか腰はねじることができないのです。
そこで脚と胸の出番です。後ろを振り向くときの体の回転や、ボールを投げるときのダイナミックな体の回転は、ひねりが得意な股関節や、背骨や首がお互いに助け合って生み出しています。
ところがある日、胸や脚の動きが悪くなってしまい、とうとう思うように曲がったり、回ったりできなります。すると腰の関節や筋肉が足りない動きを補うために、本来は担当しない仕事を始めます。
最初は元気な腰も、疲労とともに動けなくなってきます。そして胸や脚が本来の働きを取り戻してくれるように、あなたへ訴える手段が痛みなのです。
イラストは、デスクワークにともない、痛みが生まれる様子を示しています。
腕を前に出した状態が続くことで肩や胸が硬くなっていき、柔軟な動きが失われていきます。同時に座り姿勢を続けていると、股関節は折れ曲がった状態で硬くなり、やはり本来の自由な動きが制限されます。
動かない上半身と下半身のまま立ち上がるとき、間に挟まれた腰に無理な動きが加わります。これを毎日繰り返していくと、やがて腰に痛みをともなうようになります。
たとえデスクワークでなくても、車の運転やスポーツが肩や胸の動きを悪くすることがあります。立って過ごすことが多い方も股関節の動きが悪い場合が見受けられます。
あなたも、これまでに骨盤を安定させるクッションに座ったり、より積極的にランニングやストレッチといった取り組みをされてきたかもしれません。それでも今日まですっきりしなかったのは、 体の動くべき所が動いていないからです。
立ち上がるときの腰の痛みを解決するには、体のどこの動きが良くないかを見つけ、動きを制限している筋肉を伸ばしてあげることです。
- 椅子やクッションを変えてみたけど改善しなかった
- ストレッチを試してみた
- 定期的にランニングやヨガなどの運動をしている
- マッサージなどの施術を受けたことがある
解決に大切なのは、体のクセを知ること
イラストは肩の動きを検査をしている様子です。
腕が真上に上がっていないところを見ると、肩甲骨や位置にゆがみがあったり、肩の関節の動きに問題がありそうだと予想できます。
本来は手が頭の真上にまで上がって来て、横から見ると腕で耳が隠れぐらいが理想です。
ここで腕が上がるべき本来の高さまで手を上げようとすると、体はどのような反応するのか見てみましょう。
腕を真上へ上げようとすると腰が反っています。本来は肩と胸がこなすべき動きを、腰が代わりに引き受けた結果です。いつもよりも腰のカーブを強くすることは、腰の関節や筋肉へ負担となります。
ゆがみは体の使い方によって表面化した個性です。人間は、動きやすい体の使い方、動かしやすい方、つねに合理的に選択しています。動かしにくいからと使わなくなった筋肉は弱くなっていき、ゆがみとして表面化します
例えばパソコン作業は、腕を胸の前に上げた「前にならえ」の状態が長く続くきます。すると「わざわざ腕を体の横から持ち上げてパソコン操作をするのは面倒だな」と体は考え始めます。
効率化を考えた体は、やがて腕を体の前に伸ばしやすいように肩甲骨や腕の位置をゆがませて、「デスクワーク仕様」の姿勢へと変えていきます。
検査を活用してゆがみを見つけることが体のクセを知ることへつながり、解決への糸口となります。
施術の記録
立ち上がる時の腰痛は、どのような手順を踏んで良くなっていくのか、記録から見ていきましょう。
- 症状:椅子から立ち上がる時に腰に痛みが出る。立ち上がって、何歩か歩く痛みは消える。
- ご年齢:40代
- お仕事:一日中パソコンを使う
- 試したこと:骨盤を立たせるクッション、ストレッチ、スクワット、マッサージ
これまでの流れを時系列にすると、次のような流れになります。
- 骨盤が後ろへ倒れていると診断
- お尻の筋肉が弱さが、骨盤のゆがみの原因と説明を受ける
- スクワットとストレッチを開始
- 同時期に骨盤を矯正するクッションを導入
- 改善したが、再発
- 骨盤のゆがみを解決する方法を探している
骨盤が傾いていると診断されたのをきっかけ、骨盤に特化した試行錯誤を繰り返してらっしゃいました。
原因を探るために、さまざまな検査を行います。体のさまざま部位は、動かせる範囲は決まっています。例えば天井を見上げるように頭を動かしたとき、顔と天井が平行になるぐらいにまで頭を倒すことができれば、首の動きは問題が無いと判断できます。
もし本来の動きができないでいたり、上下や左右どちらか一方が動かしにくい場合は、痛みを出す原因として特定できます。
検査結果
検査の結果、体を横へ倒す動きと、ひねる動作に問題が見つかりました。
背中の筋肉の動きを左右で比較すると、右側が硬い状態です。
原因は背中の右側と左側で、筋肉の使い方が同じではないからです。
カルテから分かることは、次の2点です。
・左側の筋肉の方が、右側よりも強い。
・右側の筋肉は縮んでいる状態
この2つが原因で、左へ倒すのが苦手です。
背中の筋肉が硬くなるだけで全身の動きへ影響が出てきます。
上半身においての影響は、手が上げりにくくなります。これは背中の筋肉が腕につながっているためです。
さらに猫背を作る作用により、後ろを振り返ったり、上を見上げる動きが悪くなり、上半身がより動きにくい状態へ変化していきます。
下半身における影響としては、骨盤を横へ動かすのが片方だけ得意になっているため、歩行のときの歩幅や、右脚の緊張が出ます。腰痛が出たり、長時間立つのが苦手です。
腰の痛みを訴えていますが、最初から腰に触れることはしません。理由は2つあります。
①炎症が悪化して、来院回数が増える
腰をマッサージすると一瞬は血行が確実に良くなるので、気持ち良くなります。ところが痛みを出している筋肉は炎症しているので、筋肉を押すことで炎症が大きくなってしまいます。すると常に痛みが出続けることになるので、施術をしている間は、症状が良くなってるのか何も変わっていないのか判断できなくなります。
これでは症状が改善されたのか、その場で分からなくなるので、「今日はここまでです。しばらく様子をみてください」と言うことになり、ご来院の回数が増える結果になります。お客様への負担が増えるのは、望ましくありません。
②痛みが出ている場所に原因が無い
腰の痛みが出ているときは、遠く離れた首や肩、脚に原因が潜んでいることが多いです。腰をもむと気持ち良くなりますが、根本的な改善にはなりません。
また痛みが出ている筋肉は、ゆるめてはいけない筋肉だったりもします。そうなると施術するほどに、さらに悪くなってしまいます。
以上の2つの理由から、 腰に痛みを訴えてはいますが、はじめから腰に触れることはしません。
施術の内容
整体ならではの施術をご紹介します。
今回は筋トレが逆効果になる良い例でした。イラストは、骨盤の傾きを正すトレーニングを指導しています。
骨盤が後ろへ倒れいてると診断されたので、これまでお尻の筋肉を強くするためにスクワット(しゃがみこみ)を続けてきたそうです。
ところが骨盤の傾きをチェックすると、骨盤は前に傾いています。
おなじスクワットでも鍛える筋肉が違います。深くしゃがむと強くなるのは、お尻の筋肉の全体で、骨盤を前に傾きを助長します。今回は骨盤を後ろへ誘導したいので、お尻の筋肉の上の部分だけを選択的にトレーニングする方法をお伝えしました。
整体は筋肉をゆるめる施術というイメージが一般にありますが、眠っている筋肉にスイッチを入れて強めることもしています。そのときに正しいトレーニングを処方するために、施術前の検査を実施します。
施術の前に実施した検査のときに痛みがあった動きに再び挑戦します。どの動きにも問題がないことを、ご本人に確認してもらいました。
痛みは日常の体の使い方が原因となった、生活習慣によるものです。毎日のストレッチとトレーニングで、関節の動きを良くしておくと再発しないことをお伝えし終了しました。これですべての施術は完了です。
立ったり座ったりは毎日のことですから、それだけにご相談も多いです。
整体で問題を解決する手順
幼いころからの遊びやスポーツ、事故や出産といったさまざまな出来事を通して身についた体の使い方が、今日の体の状態を作っています。
もし痛みが出ているなら、「これまでの体の使い方に問題がありますよ」という、あなたの体からのお知らせに他なりません。
解決するための第一の段階は、痛みを止めることです。検査を通した原因の洗い出しをした上で施術をすれば、痛みは軽減します。痛みが改善した状態になってはじめて、正しい体の使い方を習得する準備が整います。
第二段階は、正しい体の使い方を習得していくことです。元の体へ戻らないように、体と脳を変えていきます。
体の痛みは生活習慣が原因となることが多いですから、ストレッチや運動が必要となってきます。歯磨きと同じようにコツコツした継続が大切です。
痛みを解決したいと思ったら、まずは痛みを止めることです。ストレッチや運動は、その後からです。