肩こりで首が回らない症状が良くなるまで

目次

肩こりや首が回らないときに知っておきたいこと

肩こりや首が回らないときに知っておきたいことがあります。それは首が、首から遠く離れている腰や脚からの影響を受けやすい弱い場所だということです。そのため首や肩の問題を解決するときは、そことは違う場所に原因が無いか調べることが大切になってきます。

首が回らない状況は、いろいろなものがあります。
・朝起きたら、急に首が回らなくなったケース(寝違え)
・振り向いたら、急に首が回らなくなったケース(ぎっくり首)
・普段から、首が回らないケース

首が回らない程度やきっかけはさまざまですが、首が回らなかったり寝違える人の多くは、首に原因が存在しないという点で共通しています。

脊椎における頸椎のサイズ

人体の背骨は首からお尻までつながっていますが、腰の骨に比べると首の骨は細くなっています。

これは首は動きやすさを手に入れる代わりに、首の骨を細くした結果なのです。首の筋肉も少なくなっています。

ところが私たちの首は不安定な構造ゆえに、力強い筋肉に引っ張られやすくなっています。その力強い筋肉たちとは、どの場所にあるのでしょうか。

大腰筋の検査

イラストは下半身の筋肉をゆるめることで、首の回る範囲が改善されるかどうか検査しています。

股関節を曲げた姿勢で首を回してもらいます。すると動かなかった首が回り出すことがあります。

この股関節を曲げる検査で分かることは、首の問題を引き起こしていた筋肉が、下半身にあったということです。

運動不足やスマホによる首や肩への影響は大きいのですが、首や肩だけが影響を受けることは少ないです。むしろ腰や脚にまで及んだ影響が、首や肩の問題を大きくしています。

あなたも、これまでに意識的に肩を動かしたり、脇のストレッチを試したりと、あらゆる試行錯誤をしてきたかもしれません。それでも今日まですっきりしなかった原因は、 ゆるめる順番です。首や肩よりも大きな力を持っている筋肉が、体のバランスを悪くさせるままにしていると、いつまでも不快感が続きます。

肩こりや首が回らない問題を解決するためには、体のどこの動きが良くないかを見つけ、そして動きを制限している筋肉の中でも、とりわけ大きな筋肉から順に伸ばしてあげることが大切です。

この記事は、次のような方にも参考になります
  • 椅子や枕は見直している
  • ヨガやストレッチなどをしている
  • マッサージなどの施術を受けたことがある

解決に大切なのは、体のクセを知ること

首や肩とは別の筋肉に問題が多いことが分かりましたが、どのようにしたら原因となる場所を調べることができるのでしょうか。

体の骨組みを支える筋肉は、おおよそ400個です。これだけ多いと、どれが原因の筋肉となっているのか見極めるのは難しく思えます。そこで検査を活用します。

イラストは背中の筋肉を検査をしている様子です。ここをチェックする理由は、背中を支える筋肉だけに強力で、首への影響が大きいためです。

理想は左右ともに真横を向けるまで、体が回る状態です。背中の左右の筋肉の使い方にかたよりがあると、体の回しやすさに左右で違いが出てきます。

背中の筋肉の使い方に左右差が出る理由に、背骨が曲がる「側彎(そくわん)」があります。医師による治療を必要としないわずかな側彎は、多くの人に見られます。

背骨の傾きは腹部の筋肉が引き起こしている場合があり、この検査で問題があった人は、お腹の筋肉もゆるめてあげて初めて首や肩の痛みが解消します。

施術の記録

首が回らないだけでなく、肩こりも併せ持つ症状が、どのような手順で良くなっていくのか記録から見ていきましょう。

STEP
問診
カルテ
カルテ
  • 症状:首が回らない。肩こり。ときどき頭痛がある。
  • ご年齢:20代
  • お仕事:デスクワーク
  • 試したこと:整体、ヨガ
経緯

これまでの流れを時系列にすると、次のような流れになります。

  1. 高校生の時に四十肩を患う
  2. 大学に在学中は運動していたので、肩こりなし
  3. 社会人になってからデスクワークで首と肩にこりが出る
  4. 整体院で骨盤がずれていると説明を受けた
  5. ヨガを一時的に実施
  6. 骨盤のゆがみが原因みたいだが、首と肩の問題が解決せず困っている
STEP
検査

原因を探るために、さまざまな検査を行います。体のさまざま部位は、動かせる範囲は決まっています。もし本来の動きができないでいたり、上下や左右どちらか一方が動かしにくい場合は、そこが痛みを出す原因として考えられます。

検査結果

検査の結果、脚、胸、首にまたがる広い範囲で、猫背になる要素が隠れていました。

頭を左右へ向けて、首の動きを検査しています。

左右ともに60°程度まで動くのが望ましいですが、左を向くと途中で止まってしまいます。

こうした首の問題は、首だけにとどまりません。首が回らない範囲は、胸や腰が代わりになって回ってくれるのですが、やがて無理が重なり、腰痛となってが現れことがあります。

左を向きにくいときは、左の肩甲骨が正しい位置にない場合が多いです。昔に四十肩が起きたのが左肩ですから、以前より左の肩甲骨に問題があったことが予想されます。

次は肩甲骨をチェックしてみました。

STEP
施術

首と肩に痛みを訴えていますが、最初から首や肩に触れることはしません。理由は2つあります。

①炎症が悪化して、来院回数が増える

肩をマッサージすると一瞬は血行が確実に良くなるので、気持ち良くなります。ところが痛みを出している筋肉は炎症しているので、筋肉を押すことで炎症が大きくなってしまいます。すると常に痛みが出続けることになるので、施術をしている間は、症状が良くなってるのか何も変わっていないのか判断できなくなります。

これでは症状が改善されたのか、その場で分からなくなるので、「今日はここまでです。しばらく様子をみてください」と言うことになり、ご来院の回数が増える結果になります。お客様への負担が増えるのは、望ましくありません。

②痛みが出ている場所に原因が無い

首や肩の痛みが出ているときは、遠く離れた腰や脚に原因が潜んでいることが多いです。肩をもむと気持ち良くなりますが、根本的な改善にはなりません。
また痛みが出ている筋肉は、ゆるめてはいけない筋肉だったりもします。そうなると施術するほどに、さらに悪くなってしまいます。

以上の2つの理由から、 首と肩に痛みを訴えてはいますが、はじめから首と肩に触れることはしません。

施術の内容

整体らしい施術をご紹介します。

あえてゆがませる整体

整体と聞くと「骨盤矯正」のようなゆがみを整えるというイメージがありますが、実はあえてゆがませることをします。

体におけるクセとは、たとえ間違った使い方であっても動かしやすい方向へばかり動かしたり、傾けたりすることです。このクセを促すように動かすことで、体が正しい姿勢になるように導いていきます。

イラストは反り腰を解消するために、あえて反り腰を助長させる動きをしてもらっています。そこへ適切な抵抗を加えることで、骨盤の傾きが正し位置へ誘導しています。

抵抗をかけるため軽い筋力トレーニングとなるため、休憩を挟みながら実施しました。さわやかな疲労感とともに改善する整体です。

STEP
再検査

施術の前に実施した検査のときに痛みがあった動きに再び挑戦します。もっとも気になっていた首の動きに問題がないことを、ご本人に確認してもらいました。

学生時代のように運動を継続することを提案しました。運動で肩こりが改善することは経験からご存知でしたが、うまく機能していない体のままでの運動は、動かしやすい筋肉や関節ばかりが動いて負担が多くなります。中止しているヨガも優れた運動ですから、本来の筋肉の動きを取り戻した今なら、その効果をより体感できるはずです。

体のクセをリセットするトレーニングをお伝えし、これですべての施術は完了です。

首が回らないときの対処

人体のもっとも上部に存在する首は全身からの影響を受けるため解決が難しい部分です。多くの人が解決しようとする中でぶつかる疑問にお答えします。

肩こりや首が回らないときのストレッチは、何がいいですか?

診ないと分かりません。

ストレッチはぜひ試してほしいです。伸ばすべき場所を狙ってストレッチした場合は抜群の効果を生み出します。だからこそ押さえておきたいポイントがあります。それは、どのようにして要因となる筋肉を特定し、なおかつ安全にストレッチするかという点です。

整体で良い結果を生み出すには、次の流れで実施します。
1.問題が起きたきっかけや生活習慣など背景を確認
2.検査をして要因となる部分を特定
3.施術
4.再検査を実施して期待した結果が出ているか確認

①の背景をうかがう理由の1つに、事故のような大きな外部からの影響があった場合は、検査の結果に一貫性が出ないことがあるからです。これは間違った施術を防ぐのが目的です。

②から④の検査と施術を交互に繰り返すのは、施術の方針が正しいのか、つねに確認するのが狙いです。目的地に向かうために地図と方位磁石で確認するのと同じ考え方です。

指紋と同じように、首の状態は一人一人で異なりますから、診ることなく「これでOK」というストレッチを選びだすのは至難の業です。したがって数ある中から根拠がはっきりしないまに選び出したストレッチを試すことは、リスクがともないます。

そのリスクとは、ゆるめてはいけない筋肉をゆるめることです。姿勢のゆがみを悪化させまいと引っ張っている筋肉をゆるめると、さらに悪くなります。私はかつて、間違った筋肉を伸ばしたために、歩けなくなったことと、経験したこがないレベルの猫背になった経験があります。ストレッチ選びに慎重な理由は、これです。

「肩こりや首が回らないときのストレッチは、何がいいですか」という質問の答えは、詳しい方に診てもらって初めて知ることができます。

整体で問題を解決する手順

幼いころからの遊びやスポーツ、事故や出産といったさまざまな出来事を通して身についた体の使い方が、今日の体の状態を作っています。

もし痛みが出ているなら、「これまでの体の使い方に問題がありますよ」という、あなたの体からのお知らせに他なりません。

解決するための第一の段階は、痛みを止めることです。検査を通した原因の洗い出しをした上で施術をすれば、痛みは軽減します。痛みが改善した状態になってはじめて、正しい体の使い方を習得する準備が整います。

第二段階は、正しい体の使い方を習得していくことです。元の体へ戻らないように、体と脳を変えていきます。

体の痛みは生活習慣が原因となることが多いですから、ストレッチや運動が必要となってきます。歯磨きと同じようにコツコツした継続が大切です。

痛みを解決したいと思ったら、まずは痛みを止めることです。ストレッチや運動は、その後からです。

目次