NAKOが生まれるまで

運動療法プログラムを開始

NAKOが始まった当時、体を正しい姿勢へ導く指導することで、痛みを解消していました。運動療法と呼ばれるものです。姿勢の矯正方法として、体操と筋力トレーニングを組み合わせたプログラムを採用しました。このプログラムが優れていた点は、簡単な体操であることや、特別な道具を使うことなく取り組める点です。事故のような突発的なきっかけを除くと、痛みの原因は生活習慣が要因となりますから、定期的な体操の継続は、再発しにくい体へと変える方法としても優れたものでした。

その場での変化を求められる

やがて日本とは違う場所で、腰痛の解消プログラムを提供する場面が訪れます。骨や靭帯の長さなどに違いはあっても、体の構造は同じですから、体操の指導を受けた方々は改善していきます。腰痛で困っていた一人の男性は手術を控えてはいたものの、できれば手術せずに解決したいという思いで体操に取り組みました。数日の体操を続けたところで痛みは消え、手術の必要が無くなったと喜んでいました。こうした良い結果が口コミで広がり、しばらくの期間は現地に滞在して体操の指導を続けることになります。

見えてきた3つの問題点

しばらく現地で体操指導を実施していると、問題点が浮き彫りになっていきます。

運動療法の問題点

1つは、重度の痛みのために体操ができないというものです。

医療技術が日本と異なることもあり、国内では出会わなかったような重い症状を抱えてる方にお会いする機会が多いのです。

それまでは症状が重い場合は、できる範囲で体を動かすように伝えていたのですが、ここでは通用しません。痛みをこらえないと、わずかな動きの体操でさえもできないのです。

体操さえできれば良くなるプログラムだけに、体を動かせないと状態だと、お手伝いできることが無くなってしまうのです。

カレンダー

2つ目は、時間が足りないことです。体操は定期的な体操とトレーニングで構成されています。このため、痛みが無くなるのを実感するまでに、どうしても時間が必要です。

ところがビザの兼ね合いで滞在期間が限定されているために、「もし思うように良くならないなら、プログラムの内容を見直しましょう」といった提案はできません。

中には隣町から数時間かけて訪れる方がいらっしゃるので、再びお会いすることを前提とした提案ができません。

言葉の壁

3つ目は、言葉の壁です。

たとえ体操ができたとしても、良くなると信じて痛みが無くなる日まで続けることは、時間がかかればかかるほど辛くなってきます。継続の大切さを伝え励ますことさえも、外国語となると難しくなってきます。

加えて時間の制限があります。これまでは再会するごとに継続する気持ちを維持できましたが、かつてのように何度も出会えるチャンスはありません

この3つの問題点から求められたことは、その場で痛みを取り除く即効性です。この問題を解決するために研究を始めました。

短時間で効果を出せる方法を探す

その場でひとまず痛みを取り除くことができれば、たとえ重度の症状であったり滞在期間の制限や言葉の壁があったとしても、体操に取り組みやすくなると考えました。さらに再発を防ぐ目的のトレーニングへの理解へも期待できそうです。

あらゆる症状を、すぐに軽減する方法として候補にあがったものに鍼灸(しんきゅう)、カイロプラクティック、そして整体があります。

鍼灸は道具が少ないため移動が楽で、施術する場所を選ばないことも大きなメリットです。しかし体に鍼を刺すため好みが別れます。さらに文化や環境が異なる地域では受け入れが難しい場面が予想されました。

カイロプラクティックは、認知度が高いですから受け入れてもらいやすいのですが、施術する前のレントゲン撮影が必要となることや、専用のベッドが必要なことを理由に見送りました。

整体はマッサージと似たイメージがあり受け入れてもらいやすいと考えました。さらにマット1枚あれば場所を問わず実施できるのは、いくつかの国を移動する点でも優れています。

こうして整体と運動を組み合わせた、3ステップの構想ができました。

整体と運動療法の3ステップ

●ステップ1:整体で痛みを軽減
・痛みが無くなることで体操のハードルが下がる
・良くなったという体験が体操のメリットの理解を助ける

●ステップ2:体操・トレーニングの実施
・痛みが無くなると、少ない負担で体操ができる

●ステップ3:再発予防の体操・トレーニングの継続
・良い状態を維持するための新しい生活習慣を提案

次に始めたことは数ある整体の中から、どの技術を学ぶかという調査です。

整体に求めたもの

数ある整体の種類の中から、私たちが必要とする技術を選び出すにあたり、こだわったことがあります。

再現性にこだわる

整体技術を模索する中でこだわったことの1つに、再現性の高さがあります。つまり、どなたに施術しても同じように良い結果が出せるということです。

なぜなら複数の国や地域にまたがって施術するため、人種や生活習慣が大きく異なるからです。それでも毎回、安定して良い結果を出さなければなりません。そこで解剖学に基づいた技術を採用することにします。

人体解剖実習メンバー

解剖学に基づいた整体とは、筋肉や骨の仕組みを根拠にして施術するものです。同じ筋肉であっても、立っているときと座っているときでは、働きが違うものがあります。そうした仕組みを反映して考え出したものです。

したがって特に理由もなく施術したり、気持ちが良いから筋肉を緩めるということをしません。

アメリカで人体の解剖実習に参加し、整体の手技が、どのように体の中で機能するのかを学びました。こうした解剖学に基づいた整体は、性別や年齢に左右されることなく、どの地域でも安定して均質な結果を出してくれました。

その場での変化にこだわる

改善までの時間短縮

こだわったことの2つ目は、短時間での変化です。

なぜなら体操ができないほどに症状が重い場合、その場で痛みを解消しないとできることが限られてしまうからです。体が硬くて動きが制限されている状態では、思うように体操ができません。さらに痛みが強く出ている場合は、それを軽減しなければ体操を指導することさえもできません。

私たちの現地での滞在期間が限られていることも理由となり、すぐに痛みを取り除くことにが求められていました。

安全性にこだわる

安全な整体

3つ目にこだわったのは、安心できて安全なことです。

施術が安全であることは当然ですが、たとえ安全が保証されていたとしても、どのような施術を受けるのだろうかと不安は少なからずあります。言葉の壁があれば、もっと不安を感じるかもしれません。

そこで安心いただけるように、痛みが出ている場所にはさわらずに施術する方法を採用しました。例えば、首が痛い方は、首に施術することなく痛みを軽減します。首のような繊細な場所を触ってほしくないという方は多くいらっしゃいますので、必須項目です。

強い力で関節をねじったり、ボキボキと関節を鳴らすような技術は採用していません。