女性を人生レベルで影響するホルモン。バネ指の原因もエストロゲンの不足が影響しているという説明もあります一方、エストロゲンの不足を補うとされるエクオールですが、これで改善できるんでしょうか?
日本で販売が始まったころは、エストロゲン不足を補うメッセージが多かったのも、今となっては美容を目的としたフレーズをよく目にします。きっとこの記事をご覧になった方は、ネットの情報で混乱してると思います。
論文をみる限り、エストロゲン低下によるバネ指であれば改善は期待できそうです。
この記事で分かること
- エストロゲン不足を補うエクオールの働き
- 市販のエクオールを摂取する前に大切なこと
エストロゲン不足を補うエクオールの働き
エクオールは不足したエストロゲンに代わって働く成分です。大豆イソフラボンであるダイゼインから腸内細菌の働きによって産生されます。
大豆から産生されたエクオールは、エストロゲン受容体(ERβ)に結合すると、エストロゲン(女性ホルモン)と似た働きをします。更年期にともなう障害や骨粗鬆症の予防、動脈硬化の予防、脱毛の改善、皮膚の質の改善に有効です。∗1
一方で、食物として単に大豆を大量に摂取することは効果的ではないことが知られています。
なぜならエクオールを産生できる人は、大豆をよく食べる国(中国・日本)で約50%、欧米人では約30%にとされ、大豆を食べたとしても必ずしもその恩恵を受けるわけではないからです。∗1 ∗2
そのため、手軽にエクオールを摂取できるサプリメントは、更年期のほてりなどに悩む女性に期待されています。
∗1Wulf H. Utian et al. S-equol: A Potential Nonhormonal Agent for Menopause-Related Symptom Relief https://doi.org/10.1089/jwh.2014.5006
∗2日本女性医学学会雑誌, 20: 313-332, 2012
更年期障害などエストロゲン低下による関節痛に効果がある理由
エストロゲン不足により腱や結膜の修復ががうまくいっていないのであれば、エクオールで改善できそうです。というのも、エストロゲンが腱鞘、靭帯、関節包の滑膜にたくさん存在しているからです。
エストロゲンと腱の関係
エストロゲンがその効果を発揮するためには、エストロゲン受容体(ER)に結合する必要があります。
エストロゲン受容体には2種類あります。
・ERα:子宮、卵巣、乳腺などに存在
・ERβ:骨、脳、肝臓などに存在
ポイントは、ERβが腱鞘、靭帯、関節包の滑膜に大量に含まれている点です。つまり子宮内膜と同じように腱鞘もエストロゲンの影響を受けるということです。
エストロゲンが不足すると
つまり、エストロゲンが少なくなると子宮内膜が厚くなりますが、それと同じくように滑膜も厚みが増すと考えられます。滑膜が厚くなると指の腱が通るトンネルが狭くなりますから、炎症が起きやすくなる訳です。
生理前になると手がこわばったり、体が重く感じる理由は、エストロゲンの低下により滑膜が膨張し厚くなるためです。∗3
まとめると
- エストロゲン受容体が腱鞘にたくさん存在している
- エストロゲンが不足すると腱鞘が厚くなり腱が通りにくくなる
エストロゲン不足になるバネ指ならばエクオールは効果が期待できそうです。まだ研究が少ないので、これからの研究結果に期待です。
市販のエクオールを摂取する前に大切なこと
本当にエストロゲンが原因なのか知ることが大切です。エストロゲンが足りないからとエストロゲン投与すると、乳がんや卵巣がんのリスクがありますが、エクオールには、その可能性は低いため歓迎されているようです。
しかし気になる点があります。エストロゲン不足と重なる時期の方が、筋肉へのアプローチで改善しているという事実です。
たまたま、エストロゲンが不足していなかったのかもしれません。しかし、演奏家を専門とする医師・酒井直隆氏によると、手を酷使している演奏家であっても腱鞘炎になるのは全体の30%です。痛みの原因の40%は筋肉の疲労であり、手術が必要となったケースは、ほぼ無いそうです。
専門家が知っているバネ指を下半身から攻める方法は、こちらです。
バネ指は指の腱鞘炎とされていますが、エストロゲンの不足だけが原因と決めることはできません。まず、ドクターに診てもらって何が起きているのか確認しましょう。ドクターにしか使えない医療機器があります。
もし、注射や手術、サポータ、エクオールを試しても改善しない場合は、そのアプローチが間違っている可能性があります。腱に負担がかかる他の要因がないか視点を変えてみることも大切です。
まとめ
- エクオールの効果に対する強いエビデンスは無い
- 論文ベースではエストロゲン不足のバネ指にエクオールは効果がある
- エクオールはエストロゲンに似た働きをする
- 大豆イソフラボンをエストロゲンに変換できる割合は2人に1人