腰痛があるときの楽な座り方

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腰痛があるときの楽な座り方は、難しい技術です

腰痛があるときの楽な座り方、つまり腰への負担が少ない正しい姿勢で座り方は存在します。実際にやってみると分かってくるのは、「楽な座り方を長時間にわたり維持するのは、楽ではない」という矛盾です。正しい姿勢で座るというのは、筋肉と関節が正しく働いてる状態があって初めてできるものなのです。

どうして座ることが難しいのでしょうか?それは手作業をともなうからです。

私たちが椅子に座るときに、何も作業をしないままに過ごすことは少ないです。本を読む、パソコン操作をするなど、手を使った作業がともないます。そのため手を前に出した姿勢を取ることになるのですが、手を使った作業をすると、とたんに正しい姿勢が崩れてしまいます。

バランスを取る人形

イラストは、人形が手を前に出した姿勢でバランスを取る様子を示しています。

「前にならえ」の姿勢にすると、手の重みで倒れてしまうので、足を前後に開いて安定させてます。それでも倒れてしまうため、上半身を後ろへ反らせてバランスを保ちます。

腕を前に出して立つ人



人間の場合も同じで、頭や背中、腰の位置を移動させながら前にならえの姿勢を完成させます。

ただし椅子に座っているときは脚を動かすことができませんから、猫背にしたり、骨盤を傾けてバランスを取っています。

正しい姿勢を維持しながら、手を前に出して作業するということが成り立たないことが分かります。

短時間なら正しい姿勢で作業できるかもしれません。しかし時間の経過とともに疲労するのが筋肉です。長時間にわたり疲労に負けずに良い姿勢を続けるは難しいのです。

あなたも、これまでに骨盤を立たせるように意識したり、背中にクッションを挟んでみたりといった取り組みをしてきたかもしれません。それでも今日まですっきりしなかったのは、 座り方の問題だけではありません。座りながら作業をするという特別な技術をこなすだけの準備が体に備わっていなかったからです。

腰痛のとき楽に座るためには、体のどこの動きが良くないかを見つけ、正しい姿勢の邪魔をしている筋肉を伸ばしてあげることです。

この記事は、次のような方にも参考になります
  • 姿勢を褒められる
  • 椅子やクッションを変えてみた
  • ストレッチやランニングなどをしている
  • マッサージなどの施術を受けたことがある

解決に大切なのは、体のクセを知ること

椅子に座って何もしないでいるよりも、手作業をともなう座り姿勢の方が、猫背になりやすいことが分かりました。ですから普段から猫背になりやすい硬い体だと、そうでない方と比べ、椅子の上で良い姿勢を保つことは大変難しいと言えます。

良い座り方ができる状態なのかどうかを知ることは、良い座り方を知ることと同じ位に大切です。そこで普段の体の状態が、猫背になりやすいのかどうかチェックしてみましょう。

イラストは首の動きを検査をしている様子ですが、猫背だと真上を向くことができません。

理想は顔と天井が平行になることです。

真上を見上げることができない原因は、3つあります。1つは、背中が後ろへ移動して猫背になっている場合です。2つ目は肩甲骨の動き悪いために胸やお腹の動きが制限されている場合です。3つ目は首そのものの動きが悪いときです。

首の動きが悪いと猫背になりがちなので、背中が丸くなりやすい座り姿勢においては、猫背の傾向がより強く出てきます。

イラストは太ももの内側の筋肉(内転筋)の柔軟性を検査をしている様子です。

内転筋が硬いままだと、膝が床へ近づいていきません。理想の柔らかさは、床と膝の間がこぶし1〜2個分の隙間ができる程度です。

特に大内転筋が硬いと骨盤が後ろへ倒れてしまい、背中が丸くなります。

検査を活用してゆがみを見つけることが体のクセを知ることへつながり、解決への糸口となります。

施術の記録

座るのがつらい腰痛が、どのような手順で良くなっていくのか記録から見ていきましょう。

STEP
問診
カルテ
カルテ
  • 症状:座ったときと、長時間歩いたときに腰痛が出る。首や肩甲骨の間に痛みがある。
  • ご年齢:30代
  • お仕事:デスクワークが中心
  • 試したこと:背もたれクッション、ストレッチ、マッサージ
経緯

これまでの流れを時系列にすると、次のような流れになります。

  1. 座る仕事では、腰痛は仕方がないと言われた
  2. 筋肉疲労の解消にマッサージやストレッチが有効と説明を受けた
  3. ストレッチを開始
  4. 骨盤を立たせるクッションを導入
  5. 歩く時間を増やしたが、歩行中に腰痛が出るようになった
STEP
検査

原因を探るために、さまざまな検査を行います。体のさまざま部位は、動かせる範囲は決まっています。もし本来の動きができないでいたり、上下や左右どちらか一方が動かしにくい場合は、痛みを出す原因として考えられます。

検査結果

検査の結果、脚、胸、首にまたがる広い範囲で、猫背になる要素が隠れていました。

前屈検査

太もも裏の筋肉(ハムストリングス)の硬さを検査しています。

両手が床へ着くのが望ましいですが、無理でした。

太もも裏が硬いと、骨盤が後ろへ倒れやすくなるため、座ったときに腰から背中へかけて丸くなりやすい傾向があります。

さらに右側の太ももの方が硬いことも分かりました。

太ももの筋肉は人体の中で最も強力な筋肉の1つで、骨盤の位置を変化させます。骨盤の変化は足先にまで影響が及んでおり、左右の足の長さに2cmの差が出ていました。

STEP
施術

腰の痛みを訴えていますが、最初から腰に触れることはしません。理由は2つあります。

①炎症が悪化して、来院回数が増える

腰をマッサージすると一瞬は血行が確実に良くなるので、気持ち良くなります。ところが痛みを出している筋肉は炎症しているので、筋肉を押すことで炎症が大きくなってしまいます。すると常に痛みが出続けることになるので、施術をしている間は、症状が良くなってるのか何も変わっていないのか判断できなくなります。

これでは症状が改善されたのか、その場で分からなくなるので、「今日はここまでです。しばらく様子をみてください」と言うことになり、ご来院の回数が増える結果になります。お客様への負担が増えるのは、望ましくありません。

②痛みが出ている場所に原因が無い

腰の痛みが出ているときは、遠く離れた首や肩、脚に原因が潜んでいることが多いです。腰をもむと気持ち良くなりますが、根本的な改善にはなりません。
また痛みが出ている筋肉は、ゆるめてはいけない筋肉だったりもします。そうなると施術するほどに、さらに悪くなってしまいます。

以上の2つの理由から、 腰に痛みを訴えてはいますが、はじめから腰に触れることはしません。

施術の内容

整体の施術をご紹介します。

関節の調整

整体は筋肉を柔らかくするものだというイメージがありますが、実のところ関節の動きも調整もします。なぜなら動きが悪い関節が原因となって筋肉を硬くするからです。

イラストは背骨の動きが制限されている部分を探し出し、関節の動きを促しています。適切に調整できれば、痛みがその場で消えます。

今回は背中が生み出した問題が体の反対側にある腹部に影響して、伸び縮みできないお腹を作っていました。

この後の再検査では、お腹の緊張が消えたことで、天井を見上げるときの首の動きが正常範囲になりました。

これにより座っても猫背になりにくい体になります。

STEP
再検査

施術の前に実施した検査のときに痛みがあった動きに再び挑戦します。どの動きにも問題がないことを、ご本人に確認してもらいました。

痛みは日常の体の使い方が原因となった、生活習慣によるものです。座るという行為は下半身の血液の流れを止めるものですから、筋肉の状態を悪くするだけでなく寿命にも影響します。連続して座るときに気を付けることや、毎日のストレッチとトレーニングが再発を防ぐことをお伝えし終了しました。これですべての施術は完了です。

腰痛のときの姿勢について

痛みの悩み統計では、女性では2位、男性では1位に君臨するのが腰痛です。それだけにご相談も多いです。

腰痛のとき立つのと座るのは、どっちがいいですか?

痛みが出ているときは、痛みの少ない姿勢を優先してください。

痛みの原因は筋肉のバランスの崩れです。バランスが悪いときは、体に良いとされている立ち姿勢でも痛みが出ます。どちらか一方の姿勢が、必ず痛みが軽減するということはありません。

立っている方が筋肉への負担が少ないだけでなく健康にも良いことは明らかなのですが、認識しておきたい点が2つあります。

1つ目は、長時間同じ姿勢のままでいるのは、負担だということです。
たとえ立った姿勢であっても同じ姿勢のまま長時間いることは、体にとって負担となります。立ちながらのデスクワークを実際に試してみると分かりますが、10分も過ぎると姿勢が崩れてきます

自分では気づかないのですが、同じ姿勢を維持できなくなってきた筋肉が、体重を片足に乗せたり、片方の肩を下げたりしていきます。人間が長時間にわたり同じ姿勢でいる設計になっていなからです。したがって座るのと立つのを組み合わせることをおすすめします。

2つ目は、手を体の前に出して行う作業は、負担のかかる姿勢がともなうということです。
これは立っていても、座っていても同じです。立ちながらデスクワークをすれば腰痛が解決すると期待すると、その結果にがっかりするかもしれません。

わずかな時間で良いので、机上での作業をいったんやめて負担の無い姿勢に戻ることが大切です。座る時間と立つ時間を頻繫に切り替えることを、おすすめします。

腰痛のとき立つのと座るのは、どちらが良いかについてまとめると次の通りです。
・筋肉のバランスを整えないと解決しないです。
・長時間同じ姿勢でいるならば、たとえ立っていても腰痛になります。
・デスクワークそのものが負担が多く、たとえ立っていても腰痛になります。

何時間に一回立つと良いですか?

15分に1回です。立つだけでなく下半身を動かす動きをしましょう。

体が少しでも動いていれば筋肉が活動できるため代謝が低下することがありません。ところが座っているときは、下半身の筋肉の活動が完全に止まっています。すると筋肉の血流が減ってしまい筋肉の柔軟性が失われやすくなります。さらに慢性的な炎症が発生し、いろいろな疾患を引き起こす原因となります。

さらに体内に取り組むことができる酸素の最大量である、最大酸素摂取量への影響が出てきます。最大酸素摂取量は細胞の中にあるミトコンドリアが生み出すエネルギーの量に影響していて、心臓病や死亡リスクに関係してきます。

椅子に座る時間が長いと最大酸素摂取量は低下し、座る時間が長い50歳の人の最大酸素摂取量の値が、運動に取り組んでいる80歳の人の値と同じ程度になることが2003年の研究で分かっています。

それならば仕事をしていない時間帯に運動すれば死亡リスクが低下するのかと考えますが、いくら運動を追加しても死亡リスクに変化が無いことが2009年の調査で分かっています。

したがって連続して座る生活習慣がある人は、15分に1回は椅子から立ち上がって、下半身を動かす屈伸などを行いましょう。

整体で問題を解決する手順

幼いころからの遊びやスポーツ、事故や出産といったさまざまな出来事を通して身についた体の使い方が、今日の体の状態を作っています。

もし痛みが出ているなら、「これまでの体の使い方に問題がありますよ」という、あなたの体からのお知らせに他なりません。

解決するための第一の段階は、痛みを止めることです。検査を通した原因の洗い出しをした上で施術をすれば、痛みは軽減します。痛みが改善した状態になってはじめて、正しい体の使い方を習得する準備が整います。

第二段階は、正しい体の使い方を習得していくことです。元の体へ戻らないように、体と脳を変えていきます。

体の痛みは生活習慣が原因となることが多いですから、ストレッチや運動が必要となってきます。歯磨きと同じようにコツコツした継続が大切です。

痛みを解決したいと思ったら、まずは痛みを止めることです。ストレッチや運動は、その後からです。

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